HAPPY
3月14日
今日は伸兄ちゃんの誕生日だ。
ボクは3ヵ月前からの決意どおり、5時にベッドを抜け出した。
誰かの誕生日にはいつも、何か一つ、みんなで品物じゃないプレゼントを贈る事になってる。
これは何時も悩むところなんだけど、伸兄ちゃんの場合はカンタンに決まった。
みんなで早起きして、朝ご飯を作ってあげるコト。
ついでに掃除洗濯も済ませて。
そのためにボクは昨夜から泊りに来て、家から持って来た目覚し時計を5時にセットしたんだ。結局、目覚ましよりちょっと早く起きたけど。
一年前の春に、お兄ちゃんたちはアラゴをやっつけたけど、なんだかタイミングが悪くて伸兄ちゃんの誕生日には間に合わなかったから、結局今年に持ち越しになっちゃったので、他のお兄ちゃんたちも、お姉ちゃんも、ついでに白炎だってこの初めて皆で祝える伸兄ちゃんの誕生日に張り切ってる。
ボクも、まだ春休みに入ってないので平日の今日はホントは学校なんだけど、休む事にして、ここに来てる。伸兄ちゃんの誕生日祝いをするんだって言ったら、パパとママは大変だ!とか言って、急いでプレゼントを用意しに出掛けていった。当日より前にバレたら面白くないからと、ボクは留守番だった。
ホクホクで帰ってきたパパはそれをボクに持たせて、『学校の事は安心しなさい!パパはこれでも演劇部にいたんだよ。迫真の演技で誤魔化してあげるからね!』とか言って、ママに突っ込まれてた。
だってパパの会社は結構出勤の時刻が早くて、大体ボクと一緒に家をでるんだ。家にママが居るのに会社から学校に電話なんかしたら変でしょう?って。すっかりその気になってセリフを考えてたパパは、しょぼんとしててなんだかかわいそうだった。
変なのかな?オトナって大変だよね。
でもさ、普段ボクに『純ちゃん。ウソつくのはいけない事だよ』って言ってるんだから、ホントは『誤魔化す』ってトコロを突っ込まなきゃいけないんじゃないかなあ?なんて思ったけど、止めた。
こういうの、『ウソモホウベン』って言うんだよね?
当麻兄ちゃんに教えてもらったんだ。後でなんでか征士兄ちゃんが怒ってたけど・・・。まあ、当麻兄ちゃんが征士兄ちゃんに怒られてるのって何時もの事だけどなあ・・・。
なんて考えながらボクは服を着替えて、部屋をでる。
リビングまで行くと、もうみんな揃ってた。なんと、当麻兄ちゃんまで!
思わず、どうやって起こしたの??って征士兄ちゃんに聞いたら、征士兄ちゃんはなんか困ったみたいにちょっと笑って、当麻兄ちゃんは真っ赤になって蹲った。
『なんで皆聞くかなあ・・・っ』とか言って。
訳わかんなくなって、秀兄ちゃんを見たら、ニヤニヤ笑いながら、『呼吸困難であの世
を見たらしいぞ。』と言った。なんだ。キスしたのか。イマサラそれくらいでテレなくても良いのにねえ?
「ほらほら。呑気におしゃべりなんかしてると、伸が起きてきちゃうわ。あの子のコトだから、寝坊するっていったって7時には起きてきちゃうわよ。」
新品のエプロンで、準備万端のお姉ちゃんがキッチンから出て来た。
「当麻は洗濯担当ね?で秀は掃除。遼と征士と純はキッチン。それで良い?」
実は結構料理が得意な当麻兄ちゃんと、家が中華料理屋さんだから、なんとなく得意で当たり前な気がする秀兄ちゃんが料理担当から外されたのは多分つまみ食いの被害を減すため。二人とも、不服そうにブチブチ言ってたけど、なんかモンクありますか?というお姉ちゃんの一言に、ピタっとダマった。この家の最高権力者はお姉ちゃんだ。
すごすごと持ち場に向かう二人を見送ってたら、白炎がボクの服を引っ張った。
あ、そういえば白炎は担当教えてもらってないなあ。
お姉ちゃんにいうと、
「そうねえ、じゃあ伸の部屋の前で、7時まで出てこれないように座っててくれる?」
といってにっこり笑った。任しとけ!という風に吠えて、早速出て行こうとした白炎の
しっぽを、ちょっと待って!と捕まえて、リビングのテーブルの上に置いてあった、今日の
新聞から、うらが白い広告を取り出して、それにクキクキと油性マジックでなんか書き始めた。
『7時まで禁外出。だからって部屋の掃除とか始めないように!
一同』
「これくわえといて。伸が出て来たり、中でゴソゴソしてるようならちゃんと見せてね?」
とかいって、それを白炎に持たせた。
お姉ちゃんって、ホント先の先まで考える人だなあ。ボクお嫁さんにするならお姉ちゃんみたいなヒトにしよ。
使命を受けて今度こそ持ち場に向かった白炎を見送って、ボク達4人はキッチンで仕事を始めた。
そして約2時間後。
テーブルの上に、何時もよりチョット豪華な朝食が並んだ。
朝からごちそうというわけには行かないけど、それでも何時もとちょっと違う。
ボクもこの日の為に、ママに厚焼き玉子の作り方を教えてもらった。
特訓に特訓を重ねたから、伸兄ちゃんにはかなわないかも知れないけど、フツウ以上にはキレイに作れたと思う。味もね、オイシイと思うよ?切れっはしを食べた、秀兄ちゃんと当麻兄ちゃんは誉めてくれたから。
ついでに、薄焼き卵も練習したので、今日のちらし寿司の上に乗せる錦糸玉子はボクの担当になるのが決まってる。
丁度、セッティングが整ったトコロに、使命を果たした白炎が、7時きっかりに閉鎖を解除した部屋から連れて来た。
「お誕生日おめでとう〜。」
テーブルの上を見て、ちょっとテレたみたいに、でも嬉しそうな顔をした伸兄ちゃんが、何て言うか一瞬躊躇ってる瞬間を見計らって、ボクらは、打ち合わせしてたみたいに、おはようの挨拶よりも先に言う。
おはようはいつも言えるけど、おめでとうは今日の次は来年でしょ?やっぱ先に言わなきゃ
だよね。
だから、想像したとおりの嬉しそうな優しい笑顔でありがとうと言ったお兄ちゃんの顔に、ボクらもとても嬉しくなった。
そして、お昼に企画してるパーティと、それから来年の誕生日を思ってワクワクした。
やっぱねえ、こーいうのが誕生日の醍醐味だよね!
END
<お礼の言葉>
アップが遅くなってごめんなさいの冴香さんの作品。
本当にありがとうございました〜(≧▽≦)
純の一人称ですよ!
子供の視線からみた世界って案外本当のとこついてて、どきっとするときありますよね。
みんなが伸を愛してるのがわかって素敵なお話でした。
そして最後の伸の優しい笑顔が・・・v
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