第2話 <打たれ強さの秘密>

 注意!以下の文章(第2話)は食べ物を食べながら読まれるのはよされたほうがよろしいかと思われます!
 今回はめけめけの 打たれ強さの秘密 (笑)に迫ってみたい。

 唐突だが、うちの親父は 海の男 だ。
 しかも泳げない 海の男だ。

 ここで、 泳げない人間を海の男と言っていいのか? という問題が浮上するが、海をこよなく愛している( おそらく家族よりも)という一点を以てして、そう呼んでもさしつかえないのではないかと思う。
 実際、何十年もの間ヨットを趣味にしており、乗るだけじゃなくて作ってもいるから、それほど、海の男というのが的を外しているとも思わない。
 本人曰く、

 「大海原で、船が沈没したら、泳げる泳げないは大して関係ない。」

 ・・・・・・そうだ。
 まあ、身一つで海に放り投げらたとしたら、泳げる泳げないの違いは死ぬまでの残り時間のわずかな差にしかならんだろうからな。
 しかし、泳げないで海の男をはってる親父には、なんというか呆れるを通り越して 感心 する。やはり、俺の親だよ(苦笑)。

 そして、長い間、他の家族は一家の大黒柱(?)の趣味につき合わされてきた。
 幼い頃はよく、親父のヨットへ遊びに行ったものだ。海の男達は、皆、あけっぴろげで、素朴で、いい奴らだ。おじさんだけど(笑)。

 それが 「ある事件」 をきっかけに他の家族はパッタリと海へ行くことが無くなった。

 その事件が起きることになる日の朝、めけめけ一家は 親父の海 (←演歌みたいだな。笑 )に来ていた。その日は家族+親父友達1名で、某三○島までヨットで遊びに行くことになっていた。
 空は透けるような青空。まさしくヨット日和・・・・・そう思われた。

 しかし、そう、それは 嵐の前の静けさ だったのだ・・・・・・

 この場合の嵐は比喩でもなんでもない。まさしく、嵐そのままの意味だ。( ん、そういやそんなユニット名のグループがいるな。随分顔の印象が薄くて、個体の差を見分けられないけど。

 しかもその は、実のところ予想外のものでもなんでもなかったのだ。

 ところで、ヨットっていうのはもちろん誰でもが乗れるもんではない。いや、乗るだけなら誰でも乗れるが、運転するのはちゃんと免許がいる。車なんかよりずっと若くてもとれる免許だから、そんな大したもんじゃないと思うが、一応気象の知識なんかが必須なのだ。
 だからうちの親父もラジオの気象情報を聞いて、天気図を書くこともできる。

 そう。 親父は知っていた
 その日、嵐が来る であろうことを。

 でもな、知識っていうのはどんなに持っていようと、その 使い方を間違えば何も意味はない のである。どんなに素晴らしい武器をもっていようと、それを使う兵士がお馬鹿さんだったら、敵をやっつけるどこか、味方を全滅させる可能性があるように。
 最終的に大事なのは、それを使う人間 である。

 そして親父は目の前に広がる青い空を見て思ったのだ。

 「今、晴れてるし、行ってみるか。」

 山と海において、 今の天気 がどうかなんてのはあんまり関係ない。
 そんなの、ど素人の他の家族だって知っている。もし親父が、嵐が来るという予報を他の家族に知らせていたら、もちろん出航を大反対されただろう。

 しかし、全ては 海の下 ならぬ、水面下での出来事だったのだ。
 家族は何も知らないまま、嵐がやってくるだろう海へ連れ出されたのである。

 海にでてしばらく、何事もなく航海は続いた。
 海に慣れた我々一家は、船酔いなどするはずもなく、それはまあ楽しい一時であったはずだ。あんまりその後の記憶が凄すぎて、その記憶は無いけどよ(苦笑)。

 そしてそれは 日没 とともにやってきた。

 どしゃぶりの雨と風
 ただでさえ、周りは水ばかりの海なのに、これでもかというほど、空から水が振ってくる。そして、その雨を横殴りにしてくれる風。

 「ふふっ・・・・こりゃ嵐だよ」( ←ちびまる子ちゃん風

 そんな現実逃避をしたくなるぐらいの嵐の中、親父と親父友達以外の人間は為すすべもない。
 そりゃそうだ。俺らはど素人なんだから。しかも俺を含む子供達はまだみんな小学生ぐらいだったんだぜ?

 「うおーコンパスがきかねーぞ!」

 嵐の中そんな親父の声が聞こえる。
 思わず笑っちまったね。

 「コンパスがきかない」= 「方向がわからない」

 だもの。

 なんも目標物のない海の上でコンパスがきかないってことは、ようは 富士山の樹海 に迷い込んだのと同じだよな。

 しかしな、そんなこたーどうでもよかったのだ。
 いや、どうでもいいこたないが、他の家族は 当面の重大な問題 に直面していたから。

 「船酔い」である。

 未だかつて経験したことのない( あったらやばいよな)予測不可能の揺れ。
 それは、我々家族に恐ろしいほどの吐き気 をもよおさせた。

 船室では 鬼太郎のテーマソング(笑)の大合唱 だ。

 そんでもよ、俺は頑張ったんだぜ?揺れによる吐き気は俺に限って言えばなかったと思う。
 やっぱり兄弟の中じゃ最年長だし、海の苦手な母親よりは強いしさ。

 俺を吐かせたのは揺れじゃない。
 物理的な打撃 だ。

 よく考えるとすごいことだが、そんな嵐の中でも親父と親父友達を抜かした家族はヨットの中で寝ようとしていた。まあ、起きてても何もできないんだし。船の外へ行ったら、すんごい勢いで作業している親父達の邪魔だしな。

 俺に与えられた寝る場所。それはトイレのすぐ側の2段ベッドみたいになってるとこだった。一人だけ高いとこで寝てたんだよ。
 そしたら、そこの縦揺れの激しいこと。
 高波により船体が持ち上げられると、それにより俺の身体が跳ね上げられる。そんでもって、ヨットが波を越えた瞬間、船体は急降下する。
 そしてその縦揺れのスピードは俺の身体の自由落下のスピードを凌いでいた。

 俺は高波を船体が越える度に、何度となく 板のベッドに叩きつけられた のだ。

 繰り返されるボディーブロー の中、まだ小学生の女の子が吐いても罪はないよな?

 あの後も随分生きてきたけど、打撃系で吐いたのはあれっきりだよ(苦笑)。だいたい、この世の中で、 打撃が原因で吐いたことのある女 ってどれくらいいるんだろう?とにかく、あんまいないことは確かだろうな。

 しかしまあ、これで確実に俺の 打たれ強さはアップ(↑) したな。
 結果オーライ っていやーそうだよな。

 うーん、でも一歩間違えたら( その後ちゃんと戻れたよ、港に。目的地じゃなくて、出航した港にね。苦笑)、皆さんにここでお会いすることもできなかったよ。

 ふー、危ない危ない(^-^;A)。


第2話 完

コメント:一歩間違えたら、新聞に「嵐の海でヨット沈没。一家を襲った夏休みの悲劇。」
とか載ってたかもしれないよな〜(笑)。
俺の死にかけ列伝の中でもやばい度高かったと思うよ。ホント。


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